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『入門!論理学』を読んだ

2023/02/09

目次

概要

論理学について記号を用いずに多くの例えで学んでいく本です。 標準的な命題論理の公理系について真理関数を用いて妥当な論理法則の範囲を決めて、その論理法則が完全であることを証明で確認していきます。 また述語論理についても公理や命題論理との関係の説明がされていますが、妥当な論理法則の範囲を議論したり完全性を示したりすることは本の範囲外らしいです。 公理としては否定・連言・選言・条件法・存在・全称について例文や例題を用いて楽しい語り口調で書かれています。

感想

論理学がどのような範囲の論理を扱うか、どのようにして論理を扱い公理系を作っていくかについて理解できて良い本でした。
数学はいくつかの公理があって、それらから定理を導いて積み上げていくことで発展してきたのだと思っていたため、論理も同じだろうと思い込んでいたが、意味論という視点もあることが分かって面白いです。 まず排中律などの論理命題を認める立場を取りたいため、「または」や「かつ」などを真理関数として意味規定して妥当な論理法則の範囲を決めていき、そうしてできた妥当な論理法則を健全 (妥当な論理法則のみ証明できる) かつ完全 (妥当な論理法則は全て証明できる) に証明できるような公理系 (導入則、除去則) を構築していくという流れです。 意味論は公理と離れた場所にあるものではなく、その論理体系の立場 (例えば標準的な命題論理では命題は真か偽のどちらかであり、そこから真理関数を考えるという立場) を表明していることを考えると、公理系と意味論の二つの視点があるというよりは意味論が先にあって、それを支えるように公理系が組まれている感じがします。

ゲーデルの不完全性定理についても少し触れられていて、述語論理に数と等号の公理を加えただけで不完全な公理系になってしまうのが不思議で興味深いと思いました。 ここの話はコンピュータにも繋ってきそうなので、特に興味が湧きました。

まとめ

論理学の根本には人間の認識があり、そこから様々な立場の論理体系が生まれていることが面白いです (どんなことも突き詰めれば哲学に行き付いてしまうんじゃないか…)。 また述語論理の存在と全称は命題論理の選言と連言で置き換えられるが、扱う対象が無限の場合は置換できないため述語論理の意義があるという部分を読んで、論理型プログラミング言語が一階述語論理で記述される理由が分かった気がします。
日常生活では導出 (前提を真として結論を導く) と論証 (前提の正しさまで考える) を区別して正しさを評価すべきだということが学びでした。


論理学は哲学と深く結びつき、根本的で、思考の限界に挑むような学問になっているのです。

『入門!論理学』 野矢茂樹