2024 年の振り返り
概要
今年は何をして,何を考え,何が変化したのか,年の瀬に振り返ってみる.
卒業・別れ
卒業研究発表会を終え,5 年間通った豊田高専を卒業した. 寮生活も含めて 5 年もの間,一緒に数多の試験を乗り越え,肩を並べてコードを書き,車に乗ってあちこち旅行へ行った友人達と別々の環境へ移るのは,彼等が自分の生活の中に溶け込んでいただけに喪失感が大きかった. 最後は名古屋で酒を酌み交わして別れた.
あんなにも別れを惜しんで解散したけれど,環境が変化し物理的に距離ができた今でも想像以上に彼等とは定期的に会うことができている. これはひとえによくご飯に誘ってくれる彼や,旅行のとりまとめをしてくれる彼のおかげなので,本当に感謝してます.
入学・大学生活
豊橋技科大に三年次編入し,グローバルハウスに住み始めた.
共同生活には不安があったが,入居してみると親切な人が多いうえ,日本人学生と留学生の垣根を越えて住民同士で交流できる機会も多く,良い環境だと思っている.
フィールドトリップやハロウィン,クリスマスなどのイベントに積極的に参加したことで,新しい友人や知り合いができ,多くの人と交流できて楽しかった.
グローバルハウスでは国際的な視野で活動する優秀な先輩や同期とも出会うことができ,彼等からはいつも良い刺激を受けている.
また,グローバルハウスの自治会に入って住民の生活のサポートや学校側と住民の仲介を経験したことで,交友関係が広がったり,過渡期の学校の内情を知れたり,組織の中で自分たちの要求を通すための立ち回り方を学んだりできて良かった.
インターンをしていた時も感じたことだけれど,組織は外部から見えるほど一枚岩ではなく,さらに常に変容し続けるものだから,まるで一つの生物のように見えることがある.
僕はあまり政治が得意な方ではないが,人間同士のコミュニケーションによってしか物事は進められない以上,技術で食べていくとしてもやはりヒューマンスキルからは逃れられないのだと思う.
一人の社会的動物として他者との関わり方においては常に途上で最適解を探っている状態にあるものだけど,あまり悩みすぎずにぼちぼちやっていきたい.
部屋については生活空間の一部を共有するというセンシティブな問題が発生しやすい状況ではあるが,今のところ大きな争いは起こらず平穏に日々を過ごせているので,かなり満足している.
同居人とも仲を深めることができて,一緒にビリヤードをしたり,銭湯やジムに行ったりして楽しかった.
前期は授業数が多く,課題とレポートとテストに追われていた. ほとんど毎日一限からあるうえ,一つ課題を消化しても次の週には新しい課題が出題されるので,常にタスクに追われて走り続けているような状況で精神衛生が良くなかった. また,3 系の関門と言われている離散数学論とアルゴリズムとデータ構造にはかなり苦しめられたから,期末テストが無事に終わった時は安心した. 前期は 29 単位,GPA 3.72/4.00 で終了. 研究室早期配属の条件 (上位 6 名とかだった気がする)を満たすことができなかったのは残念だったが,友人達と助け合いながら勉強していたことを考えると,自分の本来の実力からしたら上出来だったと思う.
以下,前期に受けて良かった授業.
- 計算機アーキテクチャ
- パタヘネ本 (RISC-V Edition) をベースに授業が組まれている
- パタヘネ本をざっと見た印象だけれど,一部を抜き出したとかではなく,ほとんどのチャプターを網羅していて要所を押さえていると思う
- 英語 Listening &Speaking III-A
- 留学生がマジョリティで英語が飛び交う環境や英語でのプレゼンが経験できたのは良かった
- ソフトウェア演習 II-B
- Java で GoF のデザインパターンを実装する授業
- 毎回の課題がかなり重かったが,授業に追われてほとんどコードを書けていない状況だったので,課題を通してプログラミングの快感を思い出すことができた
- 離散数学論
- 圏論に入門できたのが良かった
- アルゴリズムとデータ構造
- 計算量の概念の理解が曖昧だったが,アルゴリズムの特性を把握するための漸近記法の扱い方が理解できて良かった
- 哲学
- 科学哲学に入門できたのが良かった
後期は授業数がかなり減り,バイトをする時間も増えて幸福度が高い. コードを書いたり本を読んだりする時間もそこそこ確保できている. 唯一の問題は,午前に授業が無いと生活習慣が崩壊していくということ.
インターン
春休みにピクシブで PHP の静的解析をする短期インターンに参加させてもらった. 業務での効率と安全性を高めるための PHP の型付けのアプローチを体験することができただけでなく,就活や目指すべきエンジニア像を真剣に考えるきっかけになった. また,この時のご縁で PIXIV DEV MEETUP 2024 に招待していただき,約半年前にお世話になった方々とお話ししたり,過去のインターン生と交流したりできて楽しかった.
高専 3 年の頃に短期インターンでお世話になり,4 年次から長期インターンで働いていたフラーを退職した. フラーでは Web バックエンドの技術を中心に多くの学びがあっただけでなく,何度か柏の葉オフィスにもお邪魔して社員の方と交流し,実際にエンジニアとして働くことのイメージを形成することができた. 約 2 年半も在籍していたところをアルバイトとはいえ退職するのは寂しさがあったが,高専の頃から Web の技術に触れてきた中で,一度きちんとコンピュータの低レイヤも理解したい (基本的なことを復習うだけでなく専門分野として追究したい)と思い,第一希望の研究室と業務の対象領域が近いアークエッジ・スペースに転職した. 特にハードウェアは未知の領域で不安だったが,今のところ楽しく働けている. 早く一人前になれるように頑張りたい.
技術
高専の卒業研究として Yacc の Language Server を作っていた.
かなり楽しく開発できたし,綺麗なコードが書けたので良かったと思うが,足りない機能が多いので気が向いたら開発を再開したい.
大学の前期は授業とバイト以外でほとんどコードを書けず技術に対する関心が薄れていたが,後期になってからは自由な時間が増え,コードを書いたり技術記事を読んだりすることができている.
HackU に出場したり,Vim から Neovim に乗り換えたり,ブログを Astro で作り直したりした.
英語
留学生と英語で会話する機会が多かったため,英語で話すことへのハードルがかなり低くなった. 大半の留学生が第二言語として英語を勉強してきている且つ高専で日本語を使って過ごしてきたためか,僕の拙い英語に対しても丁寧に応答してくれるのがありがたい. また,多くの短期留学生はヨーロッパやラテンアメリカから来ていて,日本語を話さない彼等は共通言語である英語で日常会話をするが,その中に入っていくのはかなり困難だった. 一対一ならば多少の遅延や不便はあれど普通の会話はできるが,複数人での雑談になると何も話せなくなっていた. 話す文章を頭で構築している間に話題が目紛しい速度で変わっていくのが難易度が高く,自分の英語力の未熟さを痛感させられた. 英語で話す機会が去年と比べて格段に増えたが,TOEIC L&R のスコアは 805 で成長が見えなかった.
哲学
前期の哲学と後期の哲学特論を受けて哲学に興味を持った.
エピステモロジーは技術史の分析という方法を用いているため納得しやすく,今まで当然のように了解していた前提としての科学的知識の妥当性が,時代の中で繰り広げられてきた科学論争の最先端にあるということ以外に見出せないと気づいた.
特にカンギレムの生命論的技術論には共鳴できる部分が多く,彼の創造に関する主張も個人的なプログラミングという創作行為の経験と重なる部分があった.
授業を受けたり,いくつか本や論文を読んだり,先生や友人と議論したりする中で,哲学での論理の組み方や用語の使い方が少しずつ分かってきたが,未だに人文科学の厳密さみたいなものを捉えられていない.
本を読んでいると論理が曖昧な部分をレトリックで誤魔化しているのではないかと疑念を持つことがあるが,これは僕がまだメンタルモデルを獲得できていないことが原因なのかもしれない.
また,基礎的な知識がお粗末なので少しずつ補強していきたい.
本
今年読んだ本 (積ん読や途中で放り投げたものを除く).
- ヴィクトール・E・フランクル 『夜と霧』
- 三島由紀夫『金閣寺』
- 三島由紀夫『仮面の告白』
- 夏目漱石 『坊っちゃん』
- 宮沢賢治 『銀河鉄道の夜』
- 金森修 『フランス科学認識論の系譜』
- 太宰治 『人間失格』
映画
今年観た映画 (映画館で観たものとサブスクで観たもの).
- 『オッペンハイマー』
- 『シンドラーのリスト』
- 『Winny』
- 『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!』
- 『ルックバック』
- 『猫の恩返し』
- 『きみの色』
美術館
今年行った美術館と観た展覧会.
- 東京都美術館:印象派 モネからアメリカへ
- 東京都美術館:デ・キリコ展
- 松坂屋美術館:不思議の国のアリス展
- 金沢21世紀美術館:Lines 展,コレクション展
- 石川県立美術館:武井武雄展
その他
- 成人式に参加した
- Keychron Q11 や FlexiSpot EF1 などを購入して快適な作業環境を手に入れた
- コーヒーを淹れる工程が固定化されて安定した味は出せるようになったが技術的な上達は無かった
- ジャズ研に入ってバンドを組み,何度かライブに出たがあまりギターは上達できなかった
- 毎日書いていた日報が11月で途絶えてしまった
- 後期からジムに通うようになった
まとめ
環境の変化もあり多忙な一年だったと思うが,忙しさにかこつけてプログラミングや読書の時間が少なかったことから目を背けるのは良くない.
来年には研究室配属があり必然的に技術に向き合う時間が増えるとは思うが,少しの空き時間をスマホを眺めて浪費することなく,コードを書いたり本を読んだりすることに充てられるようにしたい.
今年は不摂生が祟って何度か体調を崩したので,もう少し健康的な生活を定着させたい.
来年は研究とインターンの両輪で頑張るぞ.